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本屋の新井です
第26回 喉元過ぎても考える
今年の5月5日は、気持ちのいい晴天だった。昼飯用の総菜を求めに商店街へ行くと、「和菓子屋に50人くらい行列しているらしいよ」と噂する声が耳に入り、ギョッとした。 近所の人は、毎年その老舗で柏餅を買うのが恒例なのだろう […] -
失われた屋号を求めて
第14回 我が家のお犬さま事情
たくさんの知らない人間と知らない犬に囲まれて、我が家の愛犬ムック(雄のトイプードル、13歳)は、かわいそうなほどブルブル震えていた。 私の帰省と月に一度のトリミングの予定がたまたま重なったこの日、ムックに付き添って […] -
本屋の新井です
第25回 熱い気持ちを浴びに行く
鶴谷香央理さんのコミック『メタモルフォーゼの縁側』(KADOKAWA)の最新刊4巻を読んだ。75歳の市野井さんと女子高生のうららさんが、好きなBLコミックを通して交流を深めていく物語だ。 すると何だか、オカヤイヅミさ […] -
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第24回 待ち遠しい日
新型コロナウイルスの影響で、勤め先の書店がしばらく休みになる前日、私は大量の本を買い込んだ。売場で気になっていたコミックや、分厚い小説の単行本、ちょっとマニアックな料理書に、最近気になるヨガや台湾の特集をした雑誌など、 […] -
失われた屋号を求めて
第13回 生意気で薄情で無敵で幸福
SNSのタイムライン上に「カミュの『ペスト』(新潮文庫)ひとり1冊まで」という文言が流れてきて思わずスクロールの手を止めた。 見ると都内の大型書店のようだった。トイレットペーパーじゃあるまいし、と興味を失いかけてふと […] -
本屋の新井です
第23回 それもタイミング
SNSでの告知や宣伝は、タイミングが大事だ。草木も眠る丑三つ時より、テレビで言う「ゴールデンタイム」を狙ったほうが、基本的には人の目につきやすく、広く共有されやすい。 それは新刊の発売も同じで、世の中が不安定で暗く落 […] -
本屋の新井です
第22回 今すぐここで買いたい!
3月の後半は書店を休み、上野のストリップ劇場で踊り子として働いていた。そこの社長さんから、本を持ってきたら受付で売るよ、と声をかけてもらったとき、私は「気を使わせてしまったな」と思った。挨拶代わりに、自著をお渡ししてい […] -
失われた屋号を求めて
第12回 窓から入っていいよ
田舎の民家は鍵をかけない。少なくとも私の育った地域はそうだった。不用心と言われればその通りだけれど、泥棒に入られたという話は聞いたことがなくて、その代わり、毎日のように野良猫に入られていた。 両手を使って器用に引き戸 […] -
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第21回 私がいてもいなくても
10日間、書店の仕事を休んだ。この10年、風邪を引かず怪我もなく、これほど長く連休を取ったのは初めてである。 毎日のように新刊が入荷するし、たとえ納品がない日でも、営業していれば必ず本は動く。自分が長く不在にすれば、 […] -
本屋の新井です
第20回 本をすすめる仕事
岩手県の奥州市立胆沢図書館が、とても手の込んだ新井賞の展開をしてくれている。しかし写真をよく見ると、肝心の本『ライオンのおやつ』(ポプラ社)が1冊しかない。書店でこれだけの展開をするなら、積み上げる必要があるだろう。だ […] -
失われた屋号を求めて
第11回 私のなつかしい石っころ
雨が降ると、その雨音にどこまでも閉じ込められてしまいそうな家で育った。昔ながらの平屋建てで屋根の面積が広く、家中どこにいても頭上で小さく爆ぜる雨音に追いかけられた。 庭いじりが趣味だった祖父は、木と同じように石にも愛 […] -
本屋の新井です
第19回 新年会の幹事
会社の忘年会、新年会、歓送迎会の類いが苦手だ。面倒だし、楽しくないし、大して美味しいものにもありつけない。前の会社では、常に強硬な態度で欠席を貫き、自動的に幹事の役からも逃れてきた。 だが、ついに私も年貢の納め時。店 […] -
ニュースフラッシュ
古いデータのテスト記事
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第18回 大当たり
コンビニで何気なく買い物をすると、くじ引きの箱を持ってこられて、よく分からずに手を突っ込んでいることがある。会計金額に応じて引けるらしいクジのアタリは、店頭に並ぶペットボトルのお茶やカップラーメンなんかだ。コンビニでの […] -
失われた屋号を求めて
第10回 それも「読書」です。
多くの人が仕事を納め終えた昨年末のある日、本を通じて知り合った友人3人と私の計4人で吉祥寺駅に集まった。目的は、誰からともなく言い出した「本の買い納め」。買い納めを宣言したところで、書店で本を買うだけなら日常と変わらな […] -
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第17回 腰が痛い
腰が痛い。100円あげるから、その新刊が詰まった段ボールを、誰か私の代わりに持ち上げてはくれないか。「どっこいしょ!」と気合いを入れないと、床に落ちたレシートも拾えない。書店員を10年続けてきたが、腰を痛めたのは初めて […]