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本屋の新井です
第23回 それもタイミング
SNSでの告知や宣伝は、タイミングが大事だ。草木も眠る丑三つ時より、テレビで言う「ゴールデンタイム」を狙ったほうが、基本的には人の目につきやすく、広く共有されやすい。 それは新刊の発売も同じで、世の中が不安定で暗く落 […] -
本屋の新井です
第22回 今すぐここで買いたい!
3月の後半は書店を休み、上野のストリップ劇場で踊り子として働いていた。そこの社長さんから、本を持ってきたら受付で売るよ、と声をかけてもらったとき、私は「気を使わせてしまったな」と思った。挨拶代わりに、自著をお渡ししてい […] -
失われた屋号を求めて
第12回 窓から入っていいよ
田舎の民家は鍵をかけない。少なくとも私の育った地域はそうだった。不用心と言われればその通りだけれど、泥棒に入られたという話は聞いたことがなくて、その代わり、毎日のように野良猫に入られていた。 両手を使って器用に引き戸 […] -
本屋の新井です
第21回 私がいてもいなくても
10日間、書店の仕事を休んだ。この10年、風邪を引かず怪我もなく、これほど長く連休を取ったのは初めてである。 毎日のように新刊が入荷するし、たとえ納品がない日でも、営業していれば必ず本は動く。自分が長く不在にすれば、 […] -
本屋の新井です
第20回 本をすすめる仕事
岩手県の奥州市立胆沢図書館が、とても手の込んだ新井賞の展開をしてくれている。しかし写真をよく見ると、肝心の本『ライオンのおやつ』(ポプラ社)が1冊しかない。書店でこれだけの展開をするなら、積み上げる必要があるだろう。だ […] -
失われた屋号を求めて
第11回 私のなつかしい石っころ
雨が降ると、その雨音にどこまでも閉じ込められてしまいそうな家で育った。昔ながらの平屋建てで屋根の面積が広く、家中どこにいても頭上で小さく爆ぜる雨音に追いかけられた。 庭いじりが趣味だった祖父は、木と同じように石にも愛 […] -
本屋の新井です
第19回 新年会の幹事
会社の忘年会、新年会、歓送迎会の類いが苦手だ。面倒だし、楽しくないし、大して美味しいものにもありつけない。前の会社では、常に強硬な態度で欠席を貫き、自動的に幹事の役からも逃れてきた。 だが、ついに私も年貢の納め時。店 […] -
ニュースフラッシュ
古いデータのテスト記事
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本屋の新井です
第18回 大当たり
コンビニで何気なく買い物をすると、くじ引きの箱を持ってこられて、よく分からずに手を突っ込んでいることがある。会計金額に応じて引けるらしいクジのアタリは、店頭に並ぶペットボトルのお茶やカップラーメンなんかだ。コンビニでの […] -
失われた屋号を求めて
第10回 それも「読書」です。
多くの人が仕事を納め終えた昨年末のある日、本を通じて知り合った友人3人と私の計4人で吉祥寺駅に集まった。目的は、誰からともなく言い出した「本の買い納め」。買い納めを宣言したところで、書店で本を買うだけなら日常と変わらな […] -
本屋の新井です
第17回 腰が痛い
腰が痛い。100円あげるから、その新刊が詰まった段ボールを、誰か私の代わりに持ち上げてはくれないか。「どっこいしょ!」と気合いを入れないと、床に落ちたレシートも拾えない。書店員を10年続けてきたが、腰を痛めたのは初めて […] -
本屋の新井です
第16回 子どもが読む本
「子どもが読む本を探しているのですが」と声を掛けられたので、まず子どもの年齢を確認した。その女性は、あなたくらいの娘だ、と答えた。塞ぎ込む娘に本を読むことを提案したところ「読んでみたい」と答えたそうなのだ。 しかし引 […] -
失われた屋号を求めて
第9回 古くてあたらしい仕事
床にペタンとお尻をついて、自分の背丈より高い本棚いっぱいにつまったたくさんの絵本を前に目を輝かせている。「なんでも好きなものを1冊選んでおいで」と、隣りの部屋から両親の声がする。小さい頃を思い出すとき、いつでもいっとう […] -
本屋の新井です
第15回 本末転倒が転倒
先日、2泊3日で山形県の肘折温泉に出掛けた。体の痛みや疲労回復などに高い効果があるとされ、本気の湯治場としても有名である。湯治とは本来、療養目的で長期間滞留することだ。たった2、3日では、旅の行き帰りの疲れが温泉の効果 […] -
本屋の新井です
第14回 私の持病(2)
2年ほど前に前歯を差し歯にしてからというもの、どうも取れて取れて仕方がない。相当注意して食事をしているが、それでも取れる。これもまた、不治の病だろうか。(前回参照) 引越しをして遠くなったため、近所のデンタルクリニッ […] -
失われた屋号を求めて
第8回 旅の道づれ
空港の土産品売り場の一角に、ひっそりと本が売られていた。新刊話題書や旅行書が並べられた棚の奥にさらにひっそりと、文庫本コーナーがあった。平台から天井まで伸びる棚が2本。著者の名前順にいろんな出版社が乱れて並ぶ色鮮やかな […]