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本屋の新井です
第52回 精神世界を移動させたい
寝入りばな、知人からLINEで写真が送られてきた。 【こちらには、精神世界が移動してきます。】と印字されたコピー用紙を、4枚も貼った柱が写っていて、狂気を感じる。 アカウントを乗っ取られたのかと警戒したが、よく見る […] -
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第51回 わかっていてもいなくても
3度目の緊急事態宣言により、勤め先の書店が休業していたため、今回は、その間にしていた、もうひとつの仕事の話である。 ストリップのステージは、通常15分程度だ。演劇やコンサートに比べると短いように思えるが、たったひとり […] -
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第50回 日用品と生活必需品
我が勤め先の日比谷コテージは、「御書印プロジェクト」に参加している。神社や寺院を巡って集める御朱印のように、書店を巡って御書印を集めるのだ。 レジで御書印帖を受け取ると、押印した横に「本は日用品です。」と必ず書く。 […] -
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第49回 生きる場所
その友人はフリーランスの助産師で、車さえあれば仕事ができる。 息子ふたりは大学生になって、それぞれ家を出た。ひと回り上の夫は定年退職をして、どうやら再就職より、家事を担当したい様子。認知症が進んだ両親はホームに入って […] -
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第48回 LIVEの実感
先日、久しぶりに配信ではないLIVEを楽しんだ。チケットの日付はちょうど1年前。コロナの影響で、予定していたLIVEが軒並み延期や中止になっていた頃だ。1年間チケットを大事に保管し続けたファンが、ライブハウスに集結した […] -
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第47回 営業時間の延長と短縮
小さな洋品店を営む知人が、どうにか売上げを伸ばせないかと頭を悩ませた末、営業時間の延長を試みたことがあったそうだ。店は2人でやっていたから、残業を交互にすれば、しばらくは続けられるだろう。値段を下げたり、広告を打ったり […] -
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第46回 原作本
日比谷コテージには、映画の原作本を集めたコーナーがある。映画館が近いこともあって、映像化帯の文庫がよく売れるのだ。 作家が紡いだ物語が、文字ではなく、映像になって多くの人に届く。そのなかには、原作があるのなら読んでみ […] -
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第45回 猫の鳴き声
仕事帰りの夜道、歩を緩めれば、物陰からじっとこちらを見ている存在に気付く。駐車場の前で足を止め、手土産のおやつを持って「こんばんは」と声をかけると、猫たちはおっかなびっくり集まってきた。 それを繰り返すうち、彼らには […] -
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第44回 暗中模索
踊り子の世界では、お姐さんのお客さんにチップをいただいた際、「お客様をありがとうございます」とお礼を言うしきたりがある。 ストリップ劇場が全国に何百館もあり、踊り子が何千人もいた時代は、先輩後輩の秩序を保つために、そ […] -
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第43回 サッカー少女と小説家の叔父
「コロナで学校が休校になって、小学生の女の子と小説家の叔父さんがサッカーをしながら旅に出るお話なんて良さそうですよね。タイトル忘れちゃったけど」 開店前の職場で、同僚にとあるフェアの内容を相談していると、ちょうどいい […] -
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第42回 本がまだない
芥川賞・直木賞の結果は、選考会が終わるまで誰にもわからない。もちろん候補作の出版社は、自社の作品が受賞すると信じて、受賞後の計画を立てているだろう。発表前に「受賞」の文字を入れたPOPや帯を刷ってしまう、気の早い会社も […] -
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第41回 20時で閉店です
先日、都内にある健康ランドで、今年初めての天然温泉に浸かった。 自宅から気軽に行ける場所に、こんこんと温泉が湧いている。もっとおしゃれでラグジュアリーなスパもあるけれど、私はここのしょっぱくて力強い湯が肌に合うし、湯 […] -
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第40回 ハムの人
毎年、お歳暮にハムのギフトを贈り続ける人がいる。「ハムの人だ!」のテレビCMでもお馴染みだ。自分で買い求めるほどそのハムが好きでなくても、目まぐるしく変化しすぎる時代のなかで、変わることなく繰り返される恒例行事は、妙に […] -
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第39回 「はい、よろこんで!」
「閉店」と貼り紙がしてある、居酒屋の引き戸を開けた。駆け付けた店員は、今日で店を畳むから、限られたメニューしか用意できないと言う。そのつもりで来たから、問題はない。広い店内には、ひとりで静かに飲むお客が数人だけだった。 […] -
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第38回 年末恒例「推し本」イベント
今年で3回目となる「目利き書店員が本音で語る、愛と辛口にあふれた選評回!」が、12月2日に開催される。新潮社主催で、去年までは神楽坂にある「ラカグ」の広々としたイベントスペースで行われていた。 今年の会場は、新潮社の […] -
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第37回 文庫化は進化
単行本発売から約5年、ついに『アル中ワンダーランド』(扶桑社)が文庫化された。アルコール中毒になったまんきつ氏が、自らの体験を綴った漫画である。酔った上での失敗談は、つい吹き出すほど面白いのに、病気に対する恐怖がべった […]