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本屋の新井です
第68回 またどこかで
日比谷コテージが閉店する。その悪いニュースを店長の花田から聞かされたのは、忘れもしない12月8日の朝だった。コテージで働いたあと、一緒に八重洲ブックセンターで開催されるトークイベントに出演する日である。 よりによって […] -
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第67回 ずらりとがらり
コンビニとは、一般的な食品や雑貨を扱う、便利さを特徴とした小型スーパーみたいなものである。様々なアイテムを、少しずつたくさん取り揃えることが最優先だと思っていた。 しかし昨今、棚まるごと同じ商品を並べる、書店でいう「 […] -
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第66回 屋台村
福井県・芦原の温泉街には、焼き鳥、フレンチ、地魚やラーメンなど、10の屋台が連なる「湯けむり横丁」がある。 契約期間は最長で10年と決まっており、独立を目指すことを条件に、地元の町おこしも兼ねて、家賃は一律6万円と格 […] -
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第65回 上がり……?
勤め先の書店が閉店する。10年以上、異動や転職を繰り返し、流れるように書店員として働いてきたが、閉店を経験するのは初めてのことだ。 いわゆる「本が売れなくなった」時代から書店員になったので、どうも危機感が足りないし、 […] -
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第64回 痺れる師走
頬に付いた枕の跡が、午後になっても消えないことにはもう驚かないが、痺れが消えないのは初めてのことだ。 猫と暮らすようになって、大の字で目覚めることはなくなった。小さき生物を潰さないようにと、眠りながらも気を配っている […] -
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第63回 猫と本
10日間ほど仕事で家を離れることになった。行き先には、同居している黒猫のくーちゃんを連れて行くことができない。 困って友人の千早茜に相談したら「なるべく小さき生き物の負担にならぬように」と、くーちゃんの生活の場を変え […] -
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第62回 これからのイベント
千早茜さんとの共作エッセイ『胃が合うふたり』の刊行に合わせて、日比谷コテージでは観客席を設けたリアルイベントを、版元の新潮社主催ではオンラインイベントを、それぞれ別の日に開催した。 徐々に増えつつあった音楽ライブやト […] -
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第61回 謎の色紙
旅のついでに足をのばし、山と田んぼに囲まれたショッピングセンターを訪れた。平屋の古い建物には、スーパーや100円ショップが並んでいる。目的の書店は、広いスペースにあらゆるジャンルが満遍なく置かれている印象だ。エロ本も堂 […] -
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第60回 秋のかき氷
急に秋めいた日の午後、私は新宿のはずれにあるビジネスホテルにいた。かき氷屋が開店したと聞いて、とりあえず予約の時間に来てみたのだが、勝手がわからない。ロビーに人待ち顔で佇めば、まるで訳ありの人妻だ。 するとタブレット […] -
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第59回 しゃぶしゃぶ食べ放題
知人としゃぶしゃぶ食べ放題の店に入った。店員に案内された席に着き、タッチパネルで肉をオーダーする。しばらくすると「お待たせいたしました」と女性の声がするも人の姿はなく、ずんぐりとしたロボットがテーブルの脇に佇んでいた。 […] -
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第58回 米と蕎麦
田んぼだと思っていた一角に、白く小さな花が咲いている。地元の人に訪ねると、蕎麦の花だそうだ。そういえばこの地域は、米だけでなく、蕎麦の名産地でもあるのだ。 ひとつの体で複数の仕事を持つメリットはたくさんある。書店員を […] -
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第57回 旅と随筆
仕事で滞在している熱海から、JR伊東線で伊東にやって来た。駅前の土産物屋を抜けると商店街で、土地に湧く温泉は共同浴場として街に溶け込んでいる。 ゆったりと流れる川と共に歩けば、やがて海へと辿り着くだろう。川の向こうに […] -
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第56回 猫と暮らす
亡くなった知人が遺した猫を引き取るため、引っ越しを決めた。都心で猫と暮らせる物件は思った以上に少ない。壁や備え付けの家具で、爪研ぎをする可能性があるからだ。 たまたま入った不動産屋さんに事情を話すと、担当してくれた人 […] -
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第55回 岐阜初上陸!
初めてJR岐阜駅に降りると、三省堂書店の大きな看板が目に入った。そうか、駅ビルとは聞いていたが、こんなに便利で目立つ場所にあったのか。隣にはスターバックスがあり、すでに賑わっている。書店は開店時間前だが、スタッフが準備 […] -
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第54回 旅先の朗読会
旅先の旅館で、うっかり本を忘れて退屈していると、友人が詩集を持って来たというので、朗読することになった。 作者を直接知っている友人は、その詩人がどんな姿をしていて、普段はどんな言葉遣いをするのかを知っているので、どう […] -
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第53回 3年越しの手紙
三浦しをんさんの小説『ののはな通信』(KADOKAWA)が文庫化した。あれから3年の月日が経ったのだ。私は当時、今とは別の書店で働いていた。 仕事帰りに単行本を買って、喫茶店で読み始めた『ののはな通信』は、同じ女子校 […]