-
本屋の新井です
第31回 出入りの衣装屋
ストリップ劇場の楽屋には、特大のトランクを提げた行商が、ふらりとやってくることがある。売っているものは、舞台用の衣装だ。買おうと思ってもなかなか見つからないもので、こうして目の前に実物を持って来られると、つい手に取っ […] -
失われた屋号を求めて
第17回 記憶の触りかた
鳴き始めた蝉の声にまだ耳が戸惑っている。絶えず聞こえている耳慣れないこの音が蝉の声だと認識するまで、ほんの少しのタイムラグが発生するのだ。「夏」「音」「みーんみーん」。これまでの夏の思い出が集まった記憶のデータベース […] -
本屋の新井です
第30回 温泉と読書
7月の中旬は、福井県の芦原温泉に滞在していた。温泉街にあるストリップ劇場で踊るためだ。寝泊まりしていた劇場の2階からは、通りを挟んだ「芦湯」の屋根が見えた。朝7時から解放されている足湯の施設で、誰でも無料で利用できる。 […] -
本屋の新井です
第29回 頼まれなくてもやってしまう
いちばん最初は、売場に飾るPOPだった。そのうち店頭でお客様から尋ねられるようになり、ラジオやテレビでも同じようなことをしてきた。本のセールストークだ。書店員という立場上、真っ先に考えるべきは勤め先の利益であり、店の外 […]