第2回  私は協働したいのだ!

 最近流れている日本自動車協会のCMが好きだ。日本の自動車業界には、550万の人達がいるという。会社や職種も関係なく、その人達が一丸となって「車を走らせ日本を動かす人」として登場する。繋がりを持ってパワーとするところが、箱根駅伝を彷彿とさせ、見るたびにウルッとしてしまうのだ。
 かつて、書店業界もそうだった。懐かしいのは池袋本店にいた頃の立教小学校入試時期の連携プレー。課題図書の問合せの一報が入ると、まずは近隣のリブロと旭屋書店に電話。各担当者も心得たもので「もうそんな季節?」とすぐ状況を確認してくれる。池袋まで来てくれるお客様を待たせたりがっかりさせないよう情報共有していた。
 また、私が20代の頃お世話になった、偕成社や講談社のセールスパートナーのおばさま方はパワフルで、的確な補充はもちろん、忙しい時は接客もしてくれた。営業さんには自社本以外のおススメを色々教わったし、そこから新しい企画が生まれたこともある。みんなが本を届けたいという想いで行動し、垣根がなく、熱気があった。正直、今はそういった体感が少なくなってしまった。

 先日、夫(某児童書出版社営業)が「いい本見つけた!」と買ってきたのは『かえりみち』(童心社、あまんきみこ作・西巻茅子画)。横浜の紀伊國屋書店で各社営業が自社のイチオシを紹介するフェアをやっていたらしい。 懐かしい! 自店では今置いてなかったなと思いつつページを捲る。
 野原で迷子になった女の子が泣いていると、通りかかったこぎつねが一緒にお家を探してくれる。女の子は帰り道を見つけるが、今度はこぎつねが迷子に。そのこぎつねをこぐまが、こぐまをこうさぎがというように迷子になると次の子が一緒に帰り道を探してあげるのだ。女の子と動物達はそれぞれ親切にされたことを思い浮かべ眠りにつく……。今まで私に手を差しのべてくれた人達を思い出し、明日、絶対注文しようと心に決める。こうして思いがけない本が店頭に並ぶ。繋がりがくれた奇跡にうれしくなる。
 一体になることで生み出される力が、今あらためて必要なのだと思う。立場やしがらみを抜きにして「本を売る」ことに本気で汗をかける人達。書店業界はそうでありたい。
(本紙「新文化」2022年2月3日号掲載)