第98回 書店・図書館の連携は〝好機〟

2024年は、6月に政府が経済財政運営の指針となる「骨太の方針」を閣議決定し、「書店と図書館等との連携促進」「書店の活性化」を盛り込んだことを契機に、図書館と書店の連携についての議論が進んだ1年だった。

情報の多くが、ウェブサイトで、記事や動画などのコンテンツの冒頭が無料で公開されており、料金を支払うと続きが閲覧・視聴できるような仕組みが普及している。そうしたなか、情報格差がこれまで以上に広がることが懸念される。

住民の知る権利をどのように守るのか、教育の格差をどのように埋めていくのか、情報の価値(地域住民のニーズ)に適った対応がますます必要となってくることを考えると、より一層、図書館の果たすべき役割が重要なものになってくる。

書店は、図書館とどのような形で連携すれば、地域の課題解決の下支えができるだろうか。これは、規模の大小を問わず、様々な書店が地域で新たな役割を担える好機だと僕は考えている。

昨年12月、文部科学省に図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議が設置された。議題の最初に「学校・家庭・地域の連携による社会全体を通じた読書環境の充実」が挙げられている。有識者における書店関係者の割合が少ないが、ぜひ積極的に図書館・学校図書館と地域の書店が連携することで生まれる効果を発信していただきたい。

これまでとは違う、受け身ではない施策の提案を期待している。

(本紙「新文化」2025年1月23日号掲載)

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