第97回 今後のポイント

日本書店商業組合連合会が書店議連総会で、業界が作成している「再販契約書ひな型」の変更に向け、取組みを進めていると報告した。報道によると、官公庁等の入札に応じた本の納品は価格維持の適用外であり、多くの書店が値引きを求められていることを理由に、再販契約書の変更によって、値引きによる競争入札を廃止し、定価販売の実現を目指すという。

再販売価格維持契約は、版元―取次・取次―書店間で取り交わされる民間と民間による契約である。今回の変更は、主に第6条の以下の2つの項目、【 】内の文言の削除を検討しているのだろう。

(2)【官公庁等の入札に応じて納入する場合】
(4)出版業者が認めた場合における、定期刊行物・継続出版物等の長期購読前払い【及び大量一括購入】、その他謝恩価格本等の割引

しかし、再販売価格維持契約書の第6条の文言を削除しても、WTOの政府調達協定の規定を批准している自治体に、定価購入を強制することはできない。書籍購入を競争入札にしない場合(随意契約)は、ここに反する可能性がある。契約まき直しの強制力の問題や、まき直しに関するリソースの確保など課題はたくさんあるだろう。

また、独禁法22条により、協同組合は再販契約の適用外となっている。再販契約書を変更しても、日書連に連なる各地の図書納入組合、そして生協などは割引価格での納品が可能だ。本件は22条の削除まで踏み込むか、官公庁等の「等」に協同組合を含むかがポイントとなる。今後の議論を注視していきたい。

(本紙「新文化」2025年1月9日号掲載)

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