第40回 スマホと読書

 文部科学省は7月28日、全国学力テストの結果を発表。あわせて、一日あたりのスマホの利用状況調査を元とし、平均正答率との相関関係の分析結果を初めて公表した。
 それは「小中学生ともSNSや動画視聴の時間が長いほど正答率が低い」というものだった。視聴時間と正答率の因果関係は立証されてないのだが、このキーワードだけが独り歩きし大きな話題となっていた。
 SNSや動画の視聴時間に制限を設けるなどの施策を試みたとしても、空いた時間を勉強に充てるとも限らないし、その時間を減らせば正答率が上がるわけでは決してないだろう。
 近年、学校図書館関係者の研修会などでお声がけいただく。運営に携わる先生方の声で増えてきたのが、スマホ、ゲーム、動画志向の生徒に対する読書指導についての相談である。僕はそれらを「本を読む入口」と捉える工夫を促している。 アウトプットということで、1950年代から70年代にかけて「生活綴方(生活のなかで感じたことなどを文章にすること)」の発展系としての読書感想文には意味があったと思う。だが、現在の表現方法は多様であり、スマホ、ゲーム、動画をアウトプットの手段や形として、認めてあげてもいいと僕は考えている。
 この調査結果が公表された意味は大きく、今後何かアクションがあるだろう。学校図書館での読書指導も、先回りして変化への対応を準備する必要がある。
 これからの読者とどう向き合うか、出版界の対応を注視したい。
(本紙「新文化」2022年8月25日号掲載)

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