第95回 再販契約の定義って…?

毎年この季節になると、外商でお世話になっている各行政機関との次年度の図書納入についての協議が始まる。長きに渡り継続してきたお取引が、来年は継続できない可能性が出てきた。

「15%値引きして納品できますので切り換えませんか」と、他の書店による営業があったそうで、担当者から「御社もどこまで値引き可能ですか?」と連絡があった。

外商は、再販売価格維持制度の枠外なのだが、売上げが上がらず、利幅の改善も見込めず、かつてない程の最低賃金の上昇に加え、資材費・運搬費・光熱費の増加により販管費を切り詰める術を見いだせない状況において、この値引き要請に応じることは不可能と判断した。赤字での取引は健全ではない。

せっかくなので、再販売価格維持契約をしっかりと見つめ直した。再販売価格維持契約の規定は次に掲げる場合には適用しない。「(1)汚損本の処分」「(2)官公庁等の入札に応じて納入する場合」「(3)出版業者が、自ら再販売価格維持出版物に付されている『定価』の表示の変更措置をした場合」「(4)出版業者が認めた場合における、定期刊行物・維持出版物等の長期購読前金払い及び大量一括購入(官公庁等の入札によらない大量一括購入)」

今回の場合は、官公庁等の入札によらない大量一括購入にあたるのだろうか。ここの定義が曖昧なので、値引き営業が発生するのだろう。図書館への納入だけがクローズアップされているが、様々な課題があるのである。

(本紙「新文化」2024年11月28日号掲載)

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