子どもの頃のプレゼントの定番は、リカちゃん人形とシルバニアファミリーだった。11月のお誕生日とクリスマスは2カ月連続で必ず。両親と母方の東京にいる祖母には、それぞれお家、家具、お人形と、うまく分配してリクエストしていた。
田舎に住む父方の祖父母からは、お正月用のお餅やみかんなどと一緒のダンボールで届いた。きっと近くのデパートでわからないなりに探したものを送ってくれていたんだろう。開けてみるとシルバニアファミリーのクマの家族はなぜかお父さん抜きのものだった。しかも、もう全員持っている。
今思うと祖父母が孫のために選んでくれた本当にありがたいプレゼントなのだけれど、当時は、ちょっとがっかりした。しかたがないので、ダブってしまったクマのお母さんと男の子、女の子は、双子の妹家族が離婚して出戻ったという境遇にし、赤い屋根のお家の2階の狭い部屋をあてがった。ところが、この子たちは意外にも、複雑な設定のごっこ遊びのなかで大いに活躍したのだった。
とにかく、狭く、ちいさな世界が好きだった。私の想像力だけで支えられている場所。誰にも邪魔されない幸せな空間。絵本でいうと、それはもうこみねゆらさんの世界! ため息が出るほど美しく繊細で、ちいさな愛しいモノたちがぎゅっと閉じ込められた宝箱だ。
らいおんbooksが編集を手掛けたこみねゆらさんの『もりのちいさなしたてやさん』も、ちいさなひとたちが織りなす優しい物語。しばらく品切れしていたのだけれど、文溪堂さんから新たに出版いただくことになった。ゆらさんのちいさな世界には、私の欲しかったものがぎゅうっと詰まってる。この絵本が再び多くの読者に届けられる機会を得たと思うと本当にうれしい。
姪にプレゼントを買うようになってから、リカちゃんとシルバニアへの愛が再燃している。大人はいい。誕生日もクリスマスも関係なく、手に入れることができる。先日は後輩と3人で、越谷の「シルバニア 森のキッチン」というレストランに行った。勇んで予約したのに、お客さんは私たちだけだった。観客3人でショコラウサギちゃんのステージを観た。人数が少ないから、神対応のショコラウサギちゃん。でも、やっぱりおおきいと怖いな。ミッキーは会えると本当にうれしいけど、シルバニアはやっぱり、ちいさいほうがいいな。
限定のシルバニアを大人買いし、満足して家路につく。そして飽かずに眺めるのだ。私だけのちいさな世界を。
(本紙「新文化」2024年12月5日号掲載)