第94回 ものがたりの未来

11月5日に、読書推進月間「BOOK MEETS NEXT 2024」内のイベントで、YOASOBIが生まれるきっかけにもなった「monogatary.com」という小説投稿サイトを立ち上げた、ソニー・ミュージックエンターテイメントの屋代陽平プロデューサーと、「出版甲子園」運営者の方々と、ものがたりの未来についてお話させていただいた。

「出版甲子園」は「学生に商業出版を」をビジョンに、ユニークなアイデアをもっている学生と出版社を繋げている。学生の中に眠る可能性を発掘し、「本」という形で世に発信することを目指し活動しているという。一冊の「本」の力を信じる学生たちの想いと、紙の本に対する情熱が印象的だった。

monogatary.comは、毎日更新されるお題に対して、ユーザーが小説・エッセイ・ポエム・俳句などを自由な形式で投稿し、それにコメントや挿絵などでリアクションができる投稿サイトだ。スタート時は、投稿された物語を書籍化や漫画化し、ゆくゆくはアニメ化されてヒット作品が出ればいいなと考えていたそうだ。しかし、なかなか思うようにいかず、行きついたのが「小説から音楽をつくる」ことだったという。小説が曲として多くの人に届く過程は、本という存在の可能性を大きく広げてくれたと感じている。

フィジカルな紙の本、音楽に姿を変えた本、そして屋代さんが触れていた「物語の記憶と香り」という新しい試みも興味深く、ものがたりの未来に少し明るい光が見えた気がした。

(本紙「新文化」2024年11月14日号掲載)

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