「りえちゃんとはトモダチだから、もし一緒に仕事をして嫌いになっちゃったらイヤだから、どうしようかなあ」
初めて執筆の依頼をした時、そう言われたことをよく覚えている。
絵本作家のおくはらゆめさんの作品との出会いは、ピンポイント絵本コンペ入選作「ぼくらのいちにち」だった。のちに『くさをはむ』として講談社から出版され講談社出版文化賞絵本賞受賞する傑作なのだけれど、伸びやかな絵はもちろんのこと、その言語センスにやられてしまった! それこそ、絵本に出てくるシマウマが草をはむように、なんどもなんども、咀嚼した。滋味深い言葉が書ける人だなと思った。もっともっと、おくはらゆめの言葉が読みたい。フリーペーパーの活動をしているうち「らいおんbooks」として出版を始める事になった時から、絶対に読み物を書いてほしいと切望していた。
一学年しか違わない私たち。20代の終わり頃から、本当によく遊び、よく語り、よく飲んだ。彼女の言う通り、もしかしたら今までの関係性にヒビが入ってしまうかも……。そんな不安もあったけれど、どうしてもおくはらゆめ抜きでは成り立たない企画だった。説得の結果、快く引き受けていただき、今月とうとう店頭に並ぶ。
ある町の小学3年生たち。日常に潜む不思議を見つけたくて奔走したり、ふいに出会ってしまっていたり。何気ない日々のなかで、自分らしさってなんだろうと考えていく。ささやかなファンタジーもありつつ、謎解きもありつつの盛りだくさんなエンタテイメント。いままでの作品とは違う、ちょっとハードボイルド風というかワイルドな(と勝手に思っているのだけれど)文章がめちゃくちゃ魅力的なのだ。タイトルは『ふみきりペンギン』(あかね書房、おくはらゆめ作・絵)。
そしてこの一冊、単行本として発売されるのだけれども、昨年刊行された堀川理万子さんの『ひみつだけど、話します』(あかね書房)と同じく、らいおんbooksが〝アラウンド8歳〟に届けたい物語として企画した作品だ。読んだ人にしかわからない、共通するささやかな仕掛けがあるのだ。ぜひ、どちらも読んで確かめてみてほしい。(そして更にこの企画でもう1冊進行中!)
来週はとうとう、待ちに待った打ち上げだ。トモダチを封印し、編集者として向き合った3年半ちょっと。あああ! やっと終わったあ! 打ち上げの席でゆめちゃんに聞いてみたい。果たして、私はあらためてもう一度、「トモダチケイゾク」してもらえるんだろうか?ちょっとドキドキしている……。
(本紙「新文化」2024年11月7日号掲載)