地方自治法の一部が改正され、公の施設の管理に関し、新たに「指定管理者制度」が創設されたのが2003年9月。それまでの管理委託制度では、地方自治体が公の施設の管理を委託できるのは、一部の公共的団体などに限定されていた。だが、この指定管理者制度では、株式会社や民間事業者も、公の施設の管理を行うことが可能となった。管理運営を指定管理者へと委託するケースは年々増えている。
公立図書館の指定管理者は、図書納入業者を兼ねることが多い。指定管理者制度が導入されることで、これまで図書納入業者に選定されていた地元資本の書店がはじき出されてしまうという事例も増えた。ノウハウのない書店が管理運営を担うことは難しく、図書の納入を諦める書店も少なくない。
声をあげることで指定管理者と図書納入業者を分離し、地元の書店も地元の公立図書館の運営に関り続けることができるという事例も生まれている。今年3月、岩手県大船渡市において地元の書店の声が反映され、議会での議論を経て計画を変更し、指定管理者と図書納入業者を分離することが決まった。
地元の書店が本を納め続けることができたのは喜ばしい。だが、今後は公立図書館を通じて「地元の住民に対して提供できるサービスは何か」を明確に打ち出す必要があるだろう。〝地元企業だから〟だけではない価値を創出しなければならない。未来読書研究所は、その価値を作るお手伝いをしたいと考えている。
(本紙「新文化」2022年4月7日号掲載)