第30回 まだ11年もう11年

 昨年は、東日本大震災から10年という節目の年であり、様々な媒体で特集が組まれ、岩手・宮城の書店の皆さんにお話をうかがう機会をたくさんいただいた。
 もっとも多くの方が話されていたのが、年々進む人口減少。とくに購買意欲の高い子育て世代の減少が、顕著に進んでいることを実感しているという。
 近隣の大型店にお客様の多くが流れていったことは致し方ないと感じつつも、何とか踏ん張り、悩みながらも本屋を続けていきたいと話す店主の明るい声が今でも耳に残っている。皆さんが口を揃えておっしゃったのは、「震災から10年は節目であるが、通過点でしかない」という 言葉だった。
 まだ11年。もう11年。犠牲者の方々に哀悼の祈りを捧げ、復興を願って数日後の深夜。あの時を思い出させるような強い揺れが東北地方を襲った。
 深夜に発生したこともあり、関係者の安否を確認しただけで被害状況を把握しきれないまま朝を迎え、徐々に被害の詳細が明らかになってきた。
 人的被害の情報はなかったが、宮城や福島の書店で商品落下やスプリンクラーの作動による被害が多数発生しているとのことだった。また同様に蔵書の多くが書架から落下し、臨時休館を余儀なくされている図書館も多いと聞いている。
 一日でも早く本を読者に届けるために、懸命に復旧作業をしている姿が目に浮かぶ。物理的にすぐに現地に向えない辛さよ。皆様の安全を第一に、一日も早い復旧をお祈りいたします。
(本紙「新文化」2022年3月24日号掲載)

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