第25回 最も多かった相談

 昨年もっとも多かった相談は、本を活用した地域連携、地域コミュティづくりについての相談だった。
 空き店舗や空き家を活用した地域コミュニケーションの再構築が地方を中心に進んでいる。地域住民の連携は、不特定多数の住人との関係構築を指す。しかし、その方策やコミュニケーションの困難さから、商店会、商工会議所、NPOなどとの団体を主とする連携にとどまってしまうことが多かった。そのような事業は、市民とのコミュニケーションが形骸化してしまうことが多い。
 そんななか、市民を巻き込む市民参加型の地域活動として、本を活用した地域連携、地域コミュティづくりを目指す人たちが増えてきた。「私設図書館」や「集合書店」など、「本」をコミュニケーションツールと位置付け、交流人口の増加を図ろうとする取組みが、日本各地で増えているのも一つの例と言えるのかもしれない。
 私設図書館とは、特定の場所に市民の皆様が本を持ち寄り、小さな図書館をつくる取組みである。読んだ本にはパーソナリティが表れる。持ち寄った本を通じてお互いをより深く知りあうことで、市民の皆様のコミュニケーションの活性化に役立っている。
 昨年12月には未来読書研究所、Foyer、地域力研究所の連携で、私設図書館で新刊本を貸し出すサービスを開始できた。これは新刊本の仕入れを、各館の予算に応じて行えるものである。今年は、この仕組みを使った私設図書館が広がっていく予定だ。
(本紙「新文化」2022年1月13日号掲載)

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