日に日に秋の気配を感じられるようになってきた。秋といえば「読書の秋」だが、今では毎年恒例〝書店業界的ネガティブキャンペーン〟の季節となっている。
文化庁が9月17日に公表した2023年度の「国語に関する世論調査」で、月に1冊も本を読まない人が6割を超えているとの発表があり、マスコミやSNSでは読書離れという言葉が独り歩きしている。
続く18日には、出版文化産業振興財団(JPIC)が、地域に書店がひとつもない「無書店」の自治体について、今年8月末時点の最新状況を公表し、不思議なことに町村部は割愛し、無書店市である15道県24市の市名を公表した。なぜ市部だけにこだわったのだろうかと不思議でならない。
国語に関する世論調査についても、結果だけをみて「不読者が15%も増えた」ことだけが取り上げられているが、調査手法の変更などもあり、経年変化を確認するためのデータとして適切なのかどうか疑問をいだいてしまう。
毎日新聞の読書世論調査で高校生以上の不読率の経年変化を見ても昔も今も50%前後で推移しており、読む人は読むし、読まない人は読まないということに大きな変化はない。さらに、16歳以下の子どもたちの読書量は大きく伸びているのだ。ここの視点が欠けている。
結果ありき感が否めないのはなぜだろうか。この季節は、毎年同じことを考えてしまう。なら、この間、業界としてどんな取組みをしてきたのだろうか、と思ってしまう。
まもなく読書の秋本番である。
(本紙「新文化」2024年10月3日号掲載)