NHKの「あさイチ」で取り上げられたことがきっかけとなり、書評誌「本の雑誌」が初めてつくった10代向けブックガイド『10代のための読書地図』(本の雑誌社)が話題を呼んでいる。
同書は、本を押し付けることを目的にしていない。本を通して世界の広さや人の可能性を示し、それぞれの違いを知るきっかけをつくる地図となっている。
「つらいときも さびしいときも たのしいときも どんなときも 本がある。」
帯に記載されているこの言葉は、本に関わるすべての人の想いと願いが詰まっている。全国の書店の店頭では、同書を軸に、その店独自の読書地図を交えてコーナーがつくられているという。
本との出合いの窓口である書店が、1冊の本を起点として、それぞれの地域の10代の若者たちへのメッセージを発信している。そんな写真をたくさん見かけた。この試みが大きなうねりとなり、書店を通じて暮らしのなかに本をもつ人が増えるきっかけとなり、定着してほしいと強く思っている。
「何気なく、本棚を見た。なりたかった自分がいた。」
ここまで原稿を書いていて、かつてある書店さんが使用していたキャッチコピーを思い出した。何気なく立ち寄った書店で、目に入った本の背表紙の言葉に、背中を押されることがある。素晴らしいキャッチコピーだと思う。
書店には何かがある。そう思ってもらえるよう、すべきことがある。『10代のための読書地図』がそのヒントを教えてくれた。
(本紙「新文化」2021年10月7日号掲載)