第18回 もち屋のうぬぼれ

 僕は楽天ブックスネットワークで、誰でも本屋さんになれる書籍少額取引サービス「Foyer(ホワイエ)」を担当している。
 「Foyer」とは、フランス語で待合やロビーという意味。本がもつ力を通して、くつろいだり、社交の場になったりする「Foyerのような場所」をつくりたいとの想いが込められている。本屋以外の事業所の一角を「書店」に変え、街の中に本との出合いの場を増やせたらと思う。
 コロナ禍にも関わらず、「新たに本を取り扱いたい」との問合せを連日いただく。様々な業種の方から、本に対する想いを伺う。
 この間、最も強く感じたのは「本に見向きもしてこなかった人々に対して、本をアピールする術がないかと真剣に考えている人たちがいる」ということだった。
 本は限りない可能性をもつ。だが、出版業界は小さな世界に閉じこもった戦略だけをとってきたのではないか。次のような考え方も根強い。
・減り続けたとしても本屋は無くならないと信じている
・旧来の方法が一番良いと思い込んでいる
・もちはもち屋だとうぬぼれている
・暇がないといって本を読まない
・良いものは黙っていても売れると安心している
・お客はわがまますぎると考えている
・そんなことはできないと改善しない
 これらをどうするか。一つ一つ向き合い、方向性を整理しなければいけない期限が迫っているのでは?
(本紙「新文化」2021年9月23日号掲載)

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