4度目の緊急事態宣言発出。日々の新規感染者数の増減に一喜一憂することもなくなってしまった。昨年に続き今夏も墓参りの帰省ができないことが確定し、少々落ち込んでいる。いつになったら岩手の実家に帰ることができるのだろうか。
先日、某社の社員向けの勉強会に講師として呼んでいただいた。依頼されたお題は、さわや書店フェザン店時代の店づくりの根本にあった考え方と実践例。準備をしながら、久しぶりに、かつての店頭写真や、当時にまとめた資料を引っ張り出して眺めていた。
ただただ一冊の本を多くの方に届けるのだ、という気持ちだけで創り上げた売場だった。最近、あの時のように丁寧に、熱く、一冊を売ることができていない。この勉強会は、参加者の皆さん以上に、自分自身に対して、薄れつつあった読者に本を届ける情熱をもう一度思い出すきっかけを与えてくれた気がする。関係者の皆さん、ごめんなさい。
お話ししたなかで、皆さんが最も興味を示してくださったのが、「ローカル化」と「差別化ではなく、ガラパゴス化すること」、そして「お客様を絞ること」という3つのパートだった。最後までやりきることができなかったが、今でもその想いは変わらない。
かつてから、チェーンなどの大型店は動脈と静脈、昔からある地域の書店は毛細血管にたとえられてきたが、ネット書店が動脈も静脈も毛細血管も兼ねるようになってきた今こそ、必要な考え方だとも思っている。
(本紙「新文化」2021年7月22日号掲載)