第9回 そ情報はどこで得られるか 出版界の課題(1)

紙の本以外のかたちで本を読みたいというニーズに応える出版物は、数的質的に十分かどうかはともかく、ないわけではない。今後もさらに充実がはかられていくと思うが、問題はアクセシブルな出版物の情報がそれらを必要とする読書困難者に届いているかどうか、だ。

ある本を「読みたい・聞きたい」と思っても、その本に、電子書籍版があるか、その電子版はリフロー型かフィックス型か、読み上げに対応しているか、オーディオブック版はあるか、といった情報は現在、電子書籍販売サイト、オーディオブック配信サイト、出版社公式サイトの多くでは得ることができない。

アクセシブルな出版物がそれを必要としている人に利用されるには、情報を簡単に入手できることが不可欠だ。情報を得る手段の一つに、国立国会図書館障害者用資料検索(愛称「みなサーチ」)がある。今年1月に公開された国立国会図書館によるアクセシブルな書籍の検索サービスで、点字版・DAISY版・テキストデータ・大活字本・LLブックなどの図書資料を検索できる。4月には国立国会図書館の他の検索サービスと統合され、国立国会図書館サーチ(NDLサーチ)の一環となり、より幅広い情報が得られるかたちとなった。市販図書については、JPO出版情報登録センターが進める出版書誌情報データベースBooksの充実に期待したい。

どちらも1冊の本にどのような版・形態があるのかを、最短の検索・閲覧手続きで、ページ遷移などなしに確認できる。ある本に文庫版・電子版などがあるかどうかが一覧でき、アクセシブルな書籍の情報も書誌ページ内に掲出される。

ただ、こうした有用なデータベースも、その存在が当事者に知られないことには効果を発揮することはできない。情報の周知の徹底は出版社や図書館の努力だけでは難しい。読書バリアフリー法では地方自治体の計画の策定が努力義務となっているが、対応している自治体の方が少ない。文部科学省の2023年の調査によれば、読書バリアフリー計画が策定されているのは47都道府県のうち13に過ぎない。

各自治体で十分な対応がされているとは言いがたいが、積極的に情報の発信につとめている自治体もある。横浜市では読書バリアフリー関連の情報を集約した「横浜市 読書バリアフリー情報サイト」を2023年9月に公開している。バリアフリー図書にどんな種類があるのかといった基本的な情報から、どこで利用できるのか、といった具体的な利用方法まで、読書バリアフリー関連情報が簡潔にまとめられている。

出版界主導のBooks、図書館主導の国立国会図書館サーチ、自治体主導の案内サイト。情報ソースにも複数の選択肢があり、より幅広い情報がカバーされ、情報を必要とする人が気軽かつ手軽にアクセスできるようになることが望ましい。

(木村匡志/小学館 アクセシブル・ブックス事業室)
(本紙「新文化」2024年9月5日号掲載)