3月、4月と立て続けに茨城県で新しい本屋が誕生した。いずれも地域コミュニティの拠点をつくろうという地元住民の想いから生まれた本屋だ。
ひたちなか市の「然々書房」(ぜんぜん~)は、ライブラリー・カフェ然々の店内で3月に営業を開始した。約5000冊の本を揃え、古書を中心としつつ新刊本も取扱う。店主をはじめ、地元の様々な人が選書した本が並ぶ。本が納められている棚や箱も地元住民が手作りし、彼らが編集した書棚からその地域が見える。そんな売場となっているのが面白い。
大洗町の「BOOK&GEAR 焚火と本」は、茨城をフィールドに「ローカルでチャレンジしたい」「自分の価値観に根差した暮らしをつくりたい」という若者たちが運営する新刊書店だ。空き家をリノベーションして、4月に開業した。彼女たちは、気が向いたときに開かれている〝ドア〟みたいなものを地方や地元につくりたいと思い、その〝ドア〟の一つが本であると考えた。
人口の減少、空き地や空き家の増加、進む少子高齢化。地方の多くは同じ課題を抱えている。まちの未来は決して明るいとはいえないが、そこで暮らしていかねばならない住人たちが、住みたいまちをつくろうとして動き出し、その一環として「本」を取り扱いたいという相談が増えている。
われわれ未来読書研究所は、地域コミュニティの拠点としての本屋、読書教育の拠点としての本屋の立ち上げと運営をサポートしていきたいと考えている。
(本紙「新文化」2021年5月13日号掲載)