「読書欲は、読みたい本との出合いの蓄積から生まれる」僕の活動のベースとなっている言葉だ。
読書の楽しみは、読者が自分で本を選択するところから始まる。そう、自分で本を選ぶ楽しみと喜びもまた、読書の一部と言えるだろう。本の読み方は人それぞれだが、読書は、心を開拓し自分のなかに創造的で生産的なものを生み出してくれるものであると思っている。読書によって自分が変化したり、心に新しく生まれてきたものを育てたり、読み取ったものを日常に結び付けることもできる。
その一冊一冊の本とどのようにして出合うのかを考え、読みたいと思う本を蓄積する場やきっかけを、創り続ける必要があると思っている。
「若者の読書離れ」という言葉が初めて使われてから、今年で43年が経過した。現在では出版不況を論じる際の枕言葉として定着しているが、この言葉は元々、その頃の読書調査を評したものだ。
当時の20歳の大学生は、現在63歳になっている。言い換えると、現役世代はすべて「若者の読書離れ」世代であると言えるのだ。
このような時代だからこそ、幼少期から小学期において本と触れ合い、読書をする環境づくりがより重要な意味をもってくる。学年が進むにつれ、与えられるものであった本が、何かのきっかけや過程を経て、子どもたち自身の意思で選び読むようになる。
「本の存在を拠り所」とする人を増やすには、新たなきっかけと過程が必要なのではないだろうか。
(本紙「新文化」2021年1月28日号掲載)