GW明け、与那国島を訪れる機会をいただいた。与那国島は、南西諸島八重山列島の島で日本の最西端に位置する島であり、いわば国境の島である。「Dr.コトー診療所」のロケ地となった島として記憶されている方も多いのではないだろうか。あまりにも壮大な大自然と神秘的な景色に心を癒されたのだが、バカンスでうかがったわけではないので、透明度の高い海で泳ぐ時間もなかったことが悔やまれる。
きっかけは未来読書研究所がいただいた「島に本が買える場所を創れないだろうか」という相談だった。東京から1900km離れた人口1600人強の島である。2022年8月に町民より要望が多かった町立図書室が開所した。子育て世代を中心に活用されていると図書室の担当者さんが教えてくれた。
一方で、蔵書冊数には限界があり、県立図書館からの一括貸し出しなどを活用しているが、もっとたくさんの新しい本との出合いがほしい。
島外から島に移り住んだという担当者さんの「今は、活字、とくに本と気軽に出合える場所がほしいと切実に感じた」という言葉が印象的だった。
島内の商店をめぐったが、一部協働売店に郷土書が販売されていたものの、リアルでの本との出合いの場が図書室のみであることが分かった。
夜、島の皆さんと琉球泡盛を飲みつつお話を聞かせていただく時間をもらった。酒宴の席でも子どもたちが気軽に本が買える場所がほしいという声があった。あたり前じゃないからこそ大切なものが見えてくるのかもしれない。
(本紙「新文化」2024年5月23日号掲載)