ネット通販や電子書籍の普及などを背景に全国的に書店が減少するなか、3月5日に経済産業省は、地域の書店の振興に向けた部局横断のプロジェクトチームを立ち上げた。新たな支援策を検討していくことを発表し、まずは書店の現場から実態や課題を直接聞くことから始めると報道された。
書店についてなんらかの報道がなされた場合、世間の反応は概ねポジティブなものが多いのだが、今回は珍しくネガティブな反応が多かったのが印象的だった。各社の報道を見比べると、報道するスタンスにも違いがみられた。
SNS上には、小売業である書店業への公費での救済の是非、という極端な書き込みも多くみられた。
「書店が1つもない自治体は全国のおよそ4分の1にのぼっている」ことが、大臣直下のプロジェクトチーム立上げに繋がっている。そもそも前提となるこの数字に間違いがある。これまでの出版業界が把握していない書店は数多くある。
未来読書研究所が把握している書店を加えて試算すると、書店がない自治体は約306自治体で自治体数の17%程度となる。前提の数字が違うことこそ問題ではないだろうか。
現場の書店に向け、実態や課題のヒヤリングがあるという。公費を活用した延命策を訴えるのではなく、努力している企業の営業活動の自由を制約するようなこともせず、これまで目を背けてきた旧弊を明るみにし、抜本的な出版流通の見直しを訴えていくような議論がなされることを望む。
(本紙「新文化」2024年3月21日号掲載)