第63回 ふるさとブックオフ

7月21日に、書店ゼロ状態の解消を目指す岩手県西和賀町は、中古品買い取り販売のブックオフコーポレーションと、町内の公共施設で古本を販売する地域連携協定を締結した。自治体が同社の商品を受託販売する店舗「ふるさとブックオフ」の設置は全国初となり、8月2日にオープンするという。

「ふるさとブックオフ」は、地方のパートナーがブックオフの商品をあずかり、管理スペースで販売することができ、富山の薬売り方式のように、販売した分だけの代金を後払いで支払う。その後、ブックオフが追加の商品を補充するという仕組みである。

在庫リスクも少なく、粗利率も良いことから、それほど大きな売上げが無くても維持できることがポイントである。ブックオフならではの無書店地域施策であり、これは空き店舗や空き家対策としても、今後各地に広がっていくのではないかと思っている。

本件を伝えるニュースは、このように締めくくられていた。

「人口減少が進む同町では約20年前、唯一あった書店が閉店。本を手にするには、学校図書館や近隣都市の書店まで足を運ぶ必要があり、読書格差が課題となっていた」と。

ここにある「約20年前、唯一あった書店」は、まさに僕がかつて経営していた書店なのだ。複雑な感情はあったが、西和賀町から本屋を無くした者として、いつかもう一度! という想いがあっただけに、今回の知らせは嬉しかった。肩の荷が下りたとさえ思っている。

(本紙「新文化」2023年8月3日号掲載)

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