第62回 公共図書館という〝場〟

先日、名古屋市守山図書館において、京都橘大学教授の嶋田学先生と「書店と図書館」をテーマにトークセッションをした。愛知・滋賀・三重の公共・学校図書館関係者、本に関する市民団体関係者が参加してくださっていた。

嶋田先生がお話された「市民のための図書館」という考え方が強く印象に残っている。

公共図書館は、市民の「知る自由」「学習する権利」が保障される「場」であり、市民の教育や文化に関する活動ができる「場」であり、市民が自治にかかわり主権者として参画することが可能な「場」である。そして、市民が同時代的な課題と感じることやコミュニティの課題について考え、その解決に主体的に関われる「場」でもあるのだという。

さらに、子どもが一人の市民としてその権利が保障される「場」でありながら、大人こそが学べ、自ら主体形成のための教養と知識を涵養できる「場」が公共図書館の機能であると説く。

嶋田先生が館長を務めていたときの「瀬戸内市民図書館もみわ広場」の取組みもご紹介いただいた。市民の切実な課題に対して図書館ができることは何か、そこが公共図書館づくりの根幹にあるべきである――そんなお話を、拝聴しながら深く頷いていた。

近年、公共図書館を取り巻く環境が大きく変化している。そして、少しずつ担う役割と機能に変化がみられるようになってきた。そんな今だからこそ、公共図書館の本来の役割を再考できた貴重な時間となった。

(本紙「新文化」2023年7月20日号掲載)

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