第60回 本当に議論すべきこと

教科書販売シーズンがひと段落し、学校図書館への図書巡回が本格化するちょうど今頃の時期。書店業界や関係団体は毎年、来年度の図書予算獲得に向けた動きを本格化させる。

学校図書予算は、文部科学省が定めた「学校図書館図書整備等5か年計画」に基づき地方財政措置が講じられている予算である。本計画は、公立小中学校等の学校図書館における、学校図書館図書標準の達成、計画的な図書の更新、新聞の複数紙配備、学校司書の配置拡充を目的としている。

だが、予算化(実際に図書館に使う予算とするか)については地方自治体に委ねられている。

多くの自治体で予算化を勝ち取れない要因はいくつかある。しかし、各要望を拝見していると、満額の予算化、待遇改善などが主であり、予算化が実現した先に、子どもたちにどのような益を提供できるのか語られることは少ない。

図書標準の問題は以前も触れたので割愛し、ここでは学校図書館の利用状況について論じたい。

全国学校図書館協議会による「学校読書調査」の2008年と19年の結果を比べてみると、学校図書館に行くという子どもの割合が大きく減少し、行かない生徒の割合が増えている。この現象は小、中、高校のいずれのデータでも同様である。

図書館が使われていないなか、新しく資料購入する予算は必要なのだろうか。司書の配置も同様だ。なぜ使われなくなったのか、そこへの対策と改善案のうえに、予算化の議論に進むことが必要だろう。

(本紙「新文化」2023年6月22日号掲載)

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