コロナ禍以降、多くの自治体で家庭学習および読書活動を支援するため「図書カード」の配布が行われている。図書カードで購入できるのは出版物のみとされているが、出版物の定義の判断は、各加盟店に委ねられているため、店舗ごとに書籍以外のものも出版物として取り扱っているのが現状だ。
調べると、文具、雑貨、食料品やDVDなど、書店内で販売している様々な商品が図書カードで購入されている実態が見えてくる。
一方で図書カードが使える店は、いわゆる〝書店〟だけである。カードの読み取り端末機を設置するには、図書カードの加盟店制度に登録しなければならない。だが、登録できるのは主要取次会社と取引し、新刊を取り扱うリアル書店だけだ。
図書カードを発行している日本図書普及の立ち上がりの歴史や、出版業界各社との共同運営会社という理由から、古書店やネット書店(大手書店や出版社が運営するサービスは除く)は対象としてこなかった。
リアル書店が減少し、加盟店が激減している状況において、図書カードの配布などの施策に対応するため、加盟店登録条件の見直しが必要になっているのではないだろうか。近年店舗数を増やしている独立系書店でも図書カードを導入できないかという相談をいただく機会が増えている。
低くはない手数料と誘客という観点をどのように判断するかは課題となるが、まずは書店の定義を広げる議論を進めていただけないものだろうか。
(本紙「新文化」2023年5月25日号掲載)