第94回 首の痛みの原因は……

首が痛い。痛いなぁと思いつつ一日過ごしたら、とうとう夜中にはそろりそろりとしか歩けなくなり、電車の揺れすら痛くて悲鳴を上げるほどになった。

ステージで踊る間は夢中で気付かなかったが、何かの振りで痛めたのかもしれない。数日経ったところで、うがいをするにも目薬をさすにも不便なため、劇場近くの接骨院に駆け込んだ。

症状を聞いた先生は、電気をかけたあと、ラジオ波を流しながら、手のひらで丁寧に、筋膜を剥がしてくれた。嘘みたいに痛みが軽くなる。

しかし原因は何だったのだろうか。また繰り返すようでは、振り付けを変えなければならない。そんな話をしていると、踊り子の姐さんが重大なシーンを目撃していることが判明した。

出番の数分前、私が舞台袖の椅子に座り、カックーンと首を折って数分間眠っていたそうなのだ。椅子に座ったままの唐突な寝落ちは、頭の重さで鞭打ちのような状態になることがあるらしい。

寝る間も惜しんで本を貪り読む人は、身に覚えがある人も多いだろう。いくら面白いからといって、強烈な眠気には抗えない瞬間がある。本を読んだまま寝落ちしがちな人は、首を痛める可能性が大いにあるので、睡魔を感じたらほどほどにしよう。

(新井見枝香)

(本紙「新文化」2023年3月30日号掲載)