インスタをチェックしていると、最近気になっているアンチエイジング化粧品の広告が流れてきて、思わずクリックする。まさに昨日の夜、必死に口コミを調べていたのだ。
すると今度は、猫柄のワンピースが流れてきて、なかなか先へ進めない。猫と暮らし始めてから、身の回りに猫グッズが増え続けているのは、こういった広告にいちいち引っかかってしまうからである。
実は化粧品もスカートも同じ通販サイトの商品で、数多あるアイテムのなかから、私が欲しそうなものをセレクトして広告を表示してくるのだ。アンチエイジングが必要ない人や、猫派ではない犬派に同じものを見せても、全くの無駄である。効果的に宣伝をするためには、相手の興味によって、見せ方を変える必要があるのだ。
一冊の本の広告も、同じキャッチコピーを使い回すのではなく、媒体が店頭POPなのか、車内広告なのかで、その本の見せ方を変えていくと、より効果的な宣伝ができるだろう。
つまり、どんな人がそこにいるかを確実に把握できれば、これほど売りやすいことはない。ちょっとした空き時間に、私がストリップ劇場のステージで本を手売りしているのは、そういう確信があるからである。
(新井見枝香/HMV&BOOKS SHIBUYA)
(本紙「新文化」2022年12月8日号掲載)