タモリといえば「笑っていいとも!」の司会というイメージだが、かつてCDを出していたことを憶えている人はいるだろうか。正確には私が生まれる前に発売したレコードの、復刻版CDだ。
知人からそこに収録されたネタの話を聞き、今さら欲しくなってCDを探したが、残念ながら廃盤。何でもあると思っていたAppleMusicにもデータはない。あとはオークションか……、と思っていたところ、たまたまコレクターから貴重なCDをお借りすることができ、私はいたく感激した。もうCDで聴けないと思うと、人はどうしてもCDで聴きたくなるものである。それは「聴く」も「読む」も同じではないだろうか。
私が初めて世に出した『探してるものはそう遠くはないのかもしれない』というエッセイ本について、版元の秀和システムから絶版を知らせる封書が唐突に届いた。もう紙では読めない本になった、という事後報告である。
ほら、どうしても紙で読みたくなってきたでしょう。「もうすぐ絶版」とPOPを付けたら、あと1冊や2冊は売れたはずだ。
絶版は決して名誉なことではないが、それすら販促のきっかけにしたかったと思うのは、私が根っからの書店員だからかもしれない。
(新井見枝香/HMV&BOOKS SHIBUYA)
(本紙「新文化」2022年6月16日号掲載)