コンビニとは、一般的な食品や雑貨を扱う、便利さを特徴とした小型スーパーみたいなものである。様々なアイテムを、少しずつたくさん取り揃えることが最優先だと思っていた。
しかし昨今、棚まるごと同じ商品を並べる、書店でいう「多面展開」をする店舗が増えてきた。滞在時間の少ないコンビニにおいて、お客を悩ませることなく「ついで買い」を誘うやり方だ。
これだけたくさん並べるなんて、よほど自信があるのだろうと、買うつもりのなかった新製品のチョコレートに手が伸び、職場に行けば、みんな同じものを食べている。
先日も旅先のコンビニへ入ると、入口に同じペットボトルがずらりと並んでいた。だが、それはどこにでもある定番の水で、おまけが付くわけでもない。
不審に思って他の棚を見れば、スマホの充電器しかない棚や、割高な箱ディッシュしかない棚もある。冷蔵棚には冷やさなくてもいいカップの味噌汁が並び、食べたかった新製品のエクレアはひとつもなかった。
閉店へのカウントダウンが始まれば、コンビニも書店も、着々と在庫を減らしていく。それは一見寂しいものでもあるが、自分で経験してみると、どこか清々として、そう悪いものでもない。
(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
(本紙「新文化」2022年2月17日号掲載)