腰が痛い。100円あげるから、その新刊が詰まった段ボールを、誰か私の代わりに持ち上げてはくれないか。「どっこいしょ!」と気合いを入れないと、床に落ちたレシートも拾えない。書店員を10年続けてきたが、腰を痛めたのは初めてのことだ。仕事に手を抜いていたわけではないから、生まれつき恵まれた体なのだろう。
しかし最近、年齢のせいかお腹まわりのお肉が気になりだして、念のため普通の腹筋運動をしてみると、一度も起き上がれないことが判明した。私は一体どうやって布団から起き上がっていたのか。
これではまずいと、店で売れていた『はじめてのやせ筋トレ』(KADOKAWA)を購入したら、これが楽しい。ちゃんとできる。調子に乗りやすい私は、ネット動画で見た「2週間で腹筋が割れる」らしい運動を試してみることにした。これが本当にキツい。2週間経っても、その運動自体ができるようになる気がしない。しかし動画は、悲鳴をあげる私の腹筋などおかまいなしに進む。結果、無理な運動で腰を痛めただけだったのである。
10年間サボってきたのは「書店員の仕事」ではなく「適度な運動」だったのだ。10年かけて6つに割っていきたい。
(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
(本紙「新文化」2020年1月16日号掲載)