先日某児童書業界誌にインタビューしていただく機会があった。それも書店員としてではなく、編集者として。聞き手は、業界の大先輩。懐深いインタビュアーにすべてを委ね存分に話をさせてもらいながら、あらためて、自分をなぞっていく。
たまたま書店業界に足を踏み入れ、本屋でありながら「らいおんbooks」という絵本レーベルをたちあげ絵本を出版し、そして今はEHONSで雑貨をつくっている。どれもこれもまだまだ夢の途中で、着地点もわからない。
自分のなかのいろいろな人格に役割を与えて生きている気がする。編集者として本と向き合っている自分と書店員として本を売っている私は、基本的に違う人間だ。そうでないとその役割を全うできない。らいおんbooksは〝課外活動〟なので、書店業のお休みの日に作業をするのだけれど、今向き合っている作品に気持ちがどっぷり浸かり切っている時は、書店員のもう一人の自分が飲み込まれそうになって切り替えが上手くいかず、ちょっと怖くなる。
それでも、新しい自分に出会うのは楽しい。未来の扉がまた一つ開くようで、ワクワクする。谷川さんも『わたし』(福音館書店、谷川俊太郎文・長新太絵)で、いろんな角度で見ると、自分の呼ばれ方や立場は変わってくるって言っているしね。そこには知らない自分がいる感じがしてドキドキする。多くの人と関わったり、今までやったことがないことに挑戦すると、いろんなわたしが増えていくんだなあ。たくさんのわたしに会いたいなあ。やりたいことが多すぎて、切実にコピーロボットが欲しい。
今回は急だったので3人だったのだけれど、年末、久し振りの「大好き会」。Bちゃんの希望で火鍋とビール。40代半ばのメンバーたち。会社や世間に求められていることと、自分のやりたいことへの折り合いが、難しいお年頃。「でもさ、私たちすっごい頑張ってるよね。どの会社も、私たちみたいな人間にもう少し優しくってもいいと思う」いつだって褒められたいと言い切るAちゃんはかっこいい。会社の偉い人たち。どうかたまにはねぎらってくださいね。褒められたら、さらに頑張りますから。
辛さにむせながら、Aちゃんがいう。「なんかさ、自分が3人欲しいよね」みんなおんなじだなあと、ちょっと安心する。やりたいことをやりきるのに、人生は何年必要なんだろう。3回くらい生まれ変わっても、やりきれる気がしない。
ひとまず、新しい年もがんばろう。ね、いろんなわたし。
(本紙「新文化」2023年1月12日号掲載)