第8回  大好き会

 定期的に集まる会がある。メンバーへの大好きが募りすぎると会いたくなるので「大好き会」。とはいっても頻度は高くなく半年に1回程度。出版社所属の編集、フリー編集、作家、ネット書店、リアル書店と、それぞれの立場で奮闘する同世代の女たち。なんなら、本をつくって売るとこまでこのメンバーでできちゃうんじゃない? っていうなかなか豪華な顔ぶれだ。
 個々ではもうかなり長いお付き合いだけど、この会自体はまだ3年くらい。コロナ禍に入ってからだ。その頃、私は本屋に意義が見いだせず生まれて初めて会社を辞めようと思っていたし、心がぐちゃぐちゃの時に目一杯話せるこの会は、心のよりどころだった。メンバーの仕事や活動もこの上なくリスペクトしていて、いつも勇気と元気がもらえるのだ。
 先日も半年ぶりの会合だった。会話は尽きない。そんななか、ふとAちゃんが「新しく友だちをつくりたい」と言い出した。Aちゃんはいつもたくさんの人に囲まれて社交的に見えるが、本人曰くそうではないらしい。どこでも入り込む私と違って、知らない人が集う会は苦手だという。彼女にしては意外な一言だった。
 「りえちゃん、 最新刊出たよ!」と2件目のお店にむかう途中、Bちゃんが教えてくれる。(ちなみに時刻は昼間の3時です)

 「スキップとローファー」(講談社、高松美咲作)は、以前Bちゃんに薦めてもらってドハマりしている漫画。主人公の美津未は過疎地から東京の高校に入学する。慣れない都会でのちょっと天然な美津未の言動が本当にほほえましい! 登場人物たちの繊細な心理描写も素晴らしい。新しいグループへの入り方。やっと仲良しになったと思ったらクラス替え。こんなにしんどいこともう一度やれるかな。でもちょっと、うらやましいな。
 ふとAちゃんの言葉を思う。もしかしたら私たちは、色々な経験を経てもう一度そういうターンを迎えているのかもしれない。新しい友だちだって、臆せずつくればいいのだ。その先にはまたきっと楽しいことがあるに違いない。この会でだって、気づけば私たちはいつも未来の話ばかりしてる。自分の役割がみんなと話しているうちにシンプルに整理されていく。私自身も新しい世界にチャレンジし、自信をもって未来は続いていることを子どもたちに伝え続けたいと力強く思う。
 「大好き会」で勇気をチャージして、これまた元気をもらえそうな新刊を手にし、またしばらく頑張るのだ。この最強の会があるからこそ、私は恐れず進める気がする。
(本紙「新文化」2022年8月4日号掲載)