なんと今回で連載100回を迎えることができました。出版業界のすみっこでひっそりと活動している僕に、このような場を提供し続けてくださった本紙の皆さんと、いつもお読みいただいている皆さんに感謝いたします。
先日、2007年に発売された『本を売る現場でなにが起こっているのか!?』(編集の学校・文章の学校監修/雷鳥社)を読み直した。出版社、取次、書店が抱えるそれぞれの問題点と業界全体の問題を現場視点でまとめた一冊である。
発刊から18年が経過しているが、いま盛んに叫ばれている業界全体の課題と何一つ変わりがないことに気付く。違いがあるとすれば、キャッシュレス決済手数料問題が増えたことぐらいである。
結局、提言しても何も変わらない、いやどちらかというと変わろうとしてこなかったのではないか、とすら思ってしまう。遷移、変遷、変転、変質と、書店を取り巻く「変」という言葉の意味も微妙に変化してきた歴史をしみじみと感じた。
遅きに失した感はあるが、いまほどまでに書店という存在の価値を、広く生活者の皆さんに再認識してもらえる可能性がある機会はもう訪れないのではないか。この機会を業界としてどのように捉えているのかが問われている。
それは、生活者目線の出版流通とは何かを考えることだと思っている。これまでの書店業界改革施策で決定的に欠けていた視点こそ、生活者視点だったのではないだろうか。
いままさにそれが問われていると感じる。
(本紙「新文化」2025年2月20日号掲載)