第16回 2010年~ウェブトゥーン海外雄飛

2010年代には、ウェブトゥーン・プラットフォーム(PF)が、日本のみならず欧米やアジア圏にも広がった。2011年には『タンタンの冒険』の出版社、Casterman出身の編集者が、フランス語圏初のウェブトゥーンPFであるDelitoonを創設。次いで12年には韓国系アメリカ人起業家が、英語圏初のPF、Tapasticを立ち上げた。

Delitoonはのちに、韓国のKidari傘下となり、TapasticはTapasと改名して韓国カカオ傘下となるが、当初は現地事業者が先行していた。

韓国のウェブトゥーンPFの海外進出が本格化し、現地の有力事業者との資本提携や買収が加速するのは、2014年頃からである。

たとえば同年、NAVERは中国語、英語、インドネシア語、タイ語に対応するLINE WEBTOONをローンチした。

2019年末にはスペイン語、フランス語版も始め、サービス名をWEBTOONに改称する。

また、投稿サービス「挑戦漫画」のグローバル版「WEBTOON CANVAS」(当初の名称は「Discover」)も各言語で導入し、韓国作品の翻訳だけでなく、現地作家の獲得にも注力した。

たとえばインドネシアでは、Faza Meonk〝Si Juki〟が、LINE WEBTOONのなかで当時、世界最大の読者数を誇る連載となった(ただし同作は、2011年からFacebookに連載されてもいた)。

同作は各種IP展開もされ、2016年には「Fazaは月に約4500万ドル稼いでいる」などと報じられた。

北米でも2018年、TapasからTurtleMe原作、Fuyuki23作画『最強の王様、二度目の人生は何をする?』が生まれ、日本でもピッコマで配信されてヒットした。

また同年、WEBTOON CANVASに投稿が開始された、ニュージーランド人、レイチェル・スマイスによる『ロア・オリンポス』が人気を呼んだ。

ギリシャ・ローマ神話をモチーフにした同作は、2020年代に入ると著名な国際コミック賞のハーベイ賞、アイズナー賞を相次いで受賞。紙の単行本は、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストで1位を獲得した。

近年では、欧米の漫画賞のノミネート作に、現地作家によるウェブトゥーンが当たり前のように入るまでになっている。

韓国事業者によるウェブトゥーンPFの海外進出を促した要因として、次のようなものが挙げられる。

(1)2010年代初頭からの現地事業者の登場、(2)仏アングレーム国際漫画祭や独フランクフルト・ブックフェアなどでのウェブトゥーン読者の存在の確認、(3)2012年のPSY「江南スタイル」など、韓国エンタメ界からのグローバルヒットの登場、(4)13年のレジンコミックスによるウェブトゥーン課金モデルの成功、などである。

この課金モデルの導入によって、ウェブトゥーン業界は大きく変わっていくことになる。

(本紙「新文化」2025年1月9日号掲載)

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