早いものでこの回が今年最後の寄稿となるそうなので、2022年を漢字一文字で表してみたい。
今年の漢字は、「街」ではないだろうか。
「まちのほんや」の表記が、「町の本屋」から当たり前のように「街の本屋」に置き換わったこともだが、「町」だけではなく、いよいよ「街」からも本屋撤退のニュースが相次いだ一年だったことがその理由である。
「本を売ること」を柱に据えた活動を経て、そこから一度離れ、「本を活用すること」を柱とした未来読書研究所の活動を通じ、多くの方々と出会うことができた。
これだけ出版不況が叫ばれ続けているにも関わらず、全国各地で「本」に寄り添い、誰かと本をつなげようとする人たちの姿に触れられたことは、大きな出来事というよりも大切な時間だった。
そして、近年では考えられないほど数多くの本屋(出版業界団体の集計ではカウントされないが)が誕生した。これまでとは違うアプローチの仕方で、本と読者を、本と地域を繋ぐ活動の広がりを目の当たりにし、本のもつ可能性を再確認した。
本に関する授業を提供するNPO法人「読書の時間」も、来年から本格的に動き出す。残念ながら書店からの問合せは少ないが、それ以外からの問合せはたくさんいただいている。
未来の読者、未来の読書のために知恵を絞り、持続可能な本とのタッチポイントを創出しようとする人たちが増え続けていることに希望を感じる。
(本紙「新文化」2022年12月15日号掲載)