スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋など秋はなにかと楽しい季節である。
読書の秋もそのひとつ。本屋や図書館で、秋にイベントやフェアを開くところも多く、本と読者の出合いの季節の到来だ。
昨年はコロナ禍で恒例となっている本に関するイベントが縮小・中止され、少し寂しかったが、今年は各地でイベントの開催が決定。さらに、秋の読書推進月間「BOOK MEETS NEXT」が始まり、出版界が一丸となって盛り上がっている。
「燈火稍可親 簡編可卷舒」(ろうそくを灯して書物を読むのにもってこいの季節になった)という唐の時代の文人・韓愈が残した詩の一節を、文豪・夏目漱石が「三四郎」で引用したことから「秋=読書」のイメージが定着したと聞いている。
僕もこの期間、本にまつわるイベントに参加させていただき、講演やワークショップなどを開催している。ワークショップを通じ、参加者の皆さんから本についてのお話を聞くのが何よりも楽しい。100人いたら100通りの読書のかたちがある。僕にとっての秋は、それぞれのかたちで生活のなかに本を取り込んでいることを感じることができる季節なのだ。
11月13日には、東京・町田市のまちライブラリー@南町田グランベリーパークで、「地域の読書環境を維持するために」というトークイベントでお話をさせていただくことになっている。今秋ラストのイベント参加だ。参加者の皆さんからどんな話をうかがえるか、今から楽しみである。
(本紙「新文化」2022年11月3日号掲載)