今年に入り、学校図書館関係者とお会いする機会が飛躍的に増えた。その際、必ず議題となるテーマが「スマホ、ゲーム、動画志向の生徒に対する読書指導」と「読書者数、読書冊数を増やす効果的な取組み」だ。
読書感想文に変わるアウトプットのかたちを模索されている先生が多数おり、様々な事例をうかがうことができた。なかでも興味深かったのが、動画を活用したアウトプットである。インターナショナルスクールから広がったそうだ。
ブックフィルムフェスティバル事務局が主催し、国立市教育委員会が共催となり運営している「ブックフィルムフェスティバル」というイベントがある。本を紹介する短い動画のコンテストで、感動した小説や、楽しかった絵本など、題材とする作品を自由に選ぶことが可能だ。どの本がいいか悩んでしまう生徒用に推薦図書も用意されている。その本がいかに素敵だったかを、ひとりでも多くの他の人に伝えるために、工夫を凝らした作品が多く、ついつい見入ってしまった。
読書冊数を評価基準とすることについては、もうやめましょうというのが僕の持論である。量より質への転換というのだろうか。数を読むよりも、読書の必要性を理解したうえで本を読む生徒を育てることが、「生活のなかに本のある人」を増やす礎となるのだと考えている。
動画でのアウトプットは、作品についてどのように捉えたかをより深く考える作業が必要となるだろう。今後の広がりに期待している。
(本紙「新文化」2022年9月8日号掲載)