NAVERをはじめとする韓国のウェブトゥーン・ポータルサイトの事業者たちは、2010年代に入ると本格的に国際展開を画策し始めた。
日本では2011年、ネイバー・ジャパンによる韓国で人気のウェブトゥーン58作品を日本語化し、週刊で配信するスマートフォン向けアプリ「NAVER Webtoons(無料マンガ)」を皮切りに、13年に同じNAVER系列のNHNPlayArtが、comicoをリリースした。
comicoは日本人作家を積極的に起用した初の縦スクロールコミックアプリだが、夜宵草『Re:LIFE』などのヒット作が生まれ、若年層を中心に支持を集める。
同年にはネイバー・ジャパンが、マンガアプリ「LINEマンガ」をスタートしたが、日本の各出版社が提供するマンガの電子書籍ストアとして始まったもので、当初ウェブトゥーンは配信されなかった(日本版NAVER Webtoonsアプリと棲み分けされていた)。
2000年代までの韓国漫画は、作品・作家単位で海外進出を試みていたが、2010年代以降はそれに加え、プラットフォーム(PF)やビジネスモデル(BM)ごと輸出する方向に変化した。
本連載ではこれまで、ある国で作品をヒットさせるには、「その国の人の好み」と「その国で主流の流通」の2つを押さえる必要があることを確認してきた。
00年代までの韓国漫画は、雑誌を中心とする日本マンガの流通システムへの適応に苦労したが、10年代以降の韓国の事業者は、流通自体を押さえる動きを見せている。
日本では、「白黒の横マンガ」か「フルカラーの縦スクロールのウェブトゥーン」かという点に関心が集中しがちだ。しかし日本では「IP」、つまり「作品」単位でマンガを捉えるのに対し、韓国では「PF」と「BM」、つまり「作家・作品と読者が集まる場」「商売の仕方」ごと国際展開を試みている点が、根本的に異なる。
たとえばLINEマンガは2015年、出版各社から提供された日本マンガ作品を曜日ごとに編成し、毎週1話ずつ更新していく「無料連載」を導入した。これは韓国では00年代から、ポータルサイトが連載ウェブトゥーンを曜日別に編成していたことに倣ったものだろう。
PFとBMの輸出だから、そこに収まる作品は韓国発に限らず、「その国の人の好み」をよく知る現地作家や事業者のものでもかまわない。
かつて韓国漫画は、日本の出版流通に合わせて戦う必要があったが、今では韓国発のPFとBMに合わせて作品づくりをする日本のクリエイターが現れている。
LINEマンガや、2016年にカカオジャパンがローンチしたピッコマが、日本最大級のマンガ・ウェブトゥーンアプリとなったことの意味は、そのように捉えるべきである。
※社名はいずれも当時のもの
(本紙「新文化」2024年11月28日号掲載)