第39回 ぎふメデイアコスモスへ

 先日、念願だった岐阜市の複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」を訪問することができた。岐阜市立中央図書館が入るこの建物は、美術館やショッピングモールと見紛うような洗練された外観だ。緩やかに湾曲した木造の格子屋根と、大きなランプシェードのような笠が目を引く内装は、市立図書館の概念を覆す美しさである。
 何よりも、「地域の個性を活かした住民主体のまちづくり」を目指す岐阜市のスローガンを、しっかりと活かす仕掛けづくりが徹底されていることに驚いた。
 初代館長であり、現在も総合プロデューサーとしてメディアコスモスの運営に携わる吉成信夫氏にお話をうかがった。
 「滞在型図書館」という独自の考え方をベースに、本の貸し借りだけではなく、人のなかに眠っている情報の受け渡しをする場としての公共図書館の姿がそこにあった。
 「子どもの声は未来の声」を旗印とし、徹底的に子どもたちに寄り添おうとする施策があふれている。中高生が書いた悩みやメッセージに司書が答える「心の叫びを聴け! YA交流掲示板」は両者を繋ぐ。そして、社会の窓口、居場所にもなっているのだ。
 「子ども司書養成講座」は情報が豊富な現代で、大切なことを選び取り、考え、たしかめ、自分の言葉にしていく力を身に付けるための仕掛けが散りばめられている。本の役割が様々な形で表現されていた。
 本が公共図書館だけではなく、まちづくりの礎となると実感させてもらった。
(本紙「新文化」2022年8月4日号掲載)

著者プロフィールはこちら