本には旬がある。
発売日は著者や出版社が決める。新刊書籍の売り時は、発売日から数週間と言われている。あくまでも新刊として店頭で展開されることにより、書店店頭でお客様が出合い購入する効能性が高い期間と言えるだろう。
一方、本の旬をつくるのは読者である。出合った時が新刊。発売日からどれほど経過しているかは読者にとって関係ないのではないだろうか。
近年、印刷技術が進歩し、少部数の出版でも利益を生み出すことが可能となった。従来のオフセット印刷ではコスト高で重版を断念せざるを得なかった書籍を再び出版し、読者に提供できる環境が整いつつある。
東京・新宿区の大日本印刷が運営するオープンイノベーション施設・DNPプラザの一角にある「外濠書店」は、より多くの方に本に興味をもってもらうため、今までにない「本との出合い方」を試す実験書店である。
外濠書店では6月20日から9月3日まで、入手困難な絵本のオンデマンドブックを展示・販売する企画展「復刻書店 いにしえ」を開催している。12タイトルのペーパーバック版とハードカバー版を、少部数印刷で復活させた。
先日、外濠書店を訪ねた。書店で流通させるには課題があるものの、実際に店頭で展開されている復刊本を手にしているお客様の姿を拝見し、入手困難だった本との出合いがリアル書店でも実現する可能性を感じることができてワクワクした。
(本紙「新文化」2022年7月7日号掲載)