第66回 どこまで耐えられるか

仕方ないよ、今年の夏は例年以上に暑かったもの。そう言い聞かせながら前月の電気料金の請求書を眺めていた。光熱費の高騰が深刻さを増している。

さらには、10月4日からは最低賃金が引き上げられる。1月に続く今年2回目の引き上げになる。所得増加施策の影響もあり、人件費は急激に上昇中だ。労働者としてはありがたいことだと理解はしている。しかし、売上げの減少に歯止めが利かない、利幅が固定されている書店の経営者としては、最低賃金の引き上げは非常に頭の痛い問題だ。

最近は客単価が高くなっている。売上点数は増えていないため、理由は出版物の値上げにあるといえよう。「出版指標年報2022」によると、出版物の価格は2.5%程度上昇している。今年の売上高には上昇分が含まれることを、前年と比べる際、念頭に置く必要がある。

価格が上がったところで利益率は変わらず、店舗運営費用がかさむ一方では、書店の利益が増えるはずはないのだ。思いつく限りの経費削減をし、限界というほど切り詰めてきたが、今後も続くであろう販管費の増加に、どこまで耐えられるのか不安で仕方ない。

粗利率を上げるためにセルフレジを導入するなど、人手がかからない店舗運営に転換できる体力のある書店はいいが、地方の弱小書店にそんな力は残されていない。

「粗利率30%を実現しよう!」そんな目標が掲げられて何年になるのだろうか。実現するころには、何軒の書店が残っているのだろうか。

 

(本紙「新文化」2023年9月21日号掲載)

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