第59回 戻ってきた学校巡回

毎年GWが終わると、書店は学校図書館の巡回をはじめる。ここ数年間はコロナ禍の影響で、提案する書籍をひとまとめにした「巡回セット」を学校にお預けし、セットとカタログから選書いただくスタイルとなっていた。

それまでは、担当者が先生と購入履歴や現在のトレンドなどを話し、コミュニケーションをとりながら選書することが多かった。先生方や支援員の皆さんから各学校での取組みや課題、悩み、予算の話などを直接お聞きする大切な機会だったが、コロナ禍で失われたことは大きな痛手だった。

2022年度には、その弊害を感じる出来事があった。担当者の異動が多く、支援員の交代も重なり、これまでの運営の流れが途絶えた年度だった。コロナ前であればコミュニケーションをとるなかで、書店側からもサポートできたのだが。それが叶わないまま23年度を迎えようとしていたとき「予算が大幅に余っており、年度末までに図書を購入する必要がある」と聞かされた。21年度に大きく廃棄作業を行ったことから、例年以上に予算がついていたのだ。

結局、23年度中に納品することはできたが、卒業した6年生は、この予算で購入した新しい資料での学びの機会を失ったことになる。予算を獲得した後の活用方法をもう少し計画的に考える必要がありそうだ。

今年度は、対面でコミュニケーションを取りながらの学校巡回が戻ってきた。使われる学校図書館づくりを目指し、関係性の再構築が急がれる。

(本紙「新文化」2023年6月8日号掲載)

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