初めてJR岐阜駅に降りると、三省堂書店の大きな看板が目に入った。そうか、駅ビルとは聞いていたが、こんなに便利で目立つ場所にあったのか。隣にはスターバックスがあり、すでに賑わっている。書店は開店時間前だが、スタッフが準備をする姿が見えた。日曜日ということもあり、10時になればすぐにお客が入るだろう。
かつて三省堂書店の本部でMDとして働いていた頃、売上データは見つつも、一度も訪れることができなかった店舗だ。たとえ業務で足を運べたとしても、たった1日、それも数時間のことだったろう。
しかし書店は時間や曜日、時期によっても、お客の流れが大幅に変わる。もっと言えば、地元の人にとってそこがどういう場所なのか、ある程度住まなければ掴めない感覚もあるはずだ。
近畿地方で信頼の厚い大垣書店が、ちょうど1年前に岐阜高島屋にオープンしたこともある。岐阜在住の本好きは、書店の使い分けをしていることだろう。近くの商店街に、良いセレクトの古書店も見つけた。
書店巡りをしに来たわけではないが、旅をするとつい本屋の立地が気になってしまい、結果として旅行カバンに入らないほど本を買ってしまうのである。
(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
(本紙「新文化」2021年8月19日号掲載)