3度目の緊急事態宣言により、勤め先の書店が休業していたため、今回は、その間にしていた、もうひとつの仕事の話である。
ストリップのステージは、通常15分程度だ。演劇やコンサートに比べると短いように思えるが、たったひとりで最後まで、すべての観客を飽きさせずに踊るのは、とても難しい。衣装を早着替えしたり、音楽に緩急を付けたり、時には芝居を入れて、ストーリー仕立てにしたりもする。
しかし、ストリップ劇場の観客は、演劇を観に来たわけではない。基本的には台詞もないため、物語を捉えきれず、なぜ踊り子が肩を震わせているのか、男のような恰好をしているのか、そこにどんな深い意味があっても、理解してもらえない場合は往々にしてある。
だが、入場料を払ってもらっている以上、たとえ何かはわからなくても、楽しい気持ちにはなってもらいたい。そのことを多少なりとも意識して作品をつくることは、プロとして必要なことだと私は思う。そういう努力は映画や小説というエンタメにも、見受けられるからだ。
数年ぶりに読み返した本に、全ての意味がひっくり返るような真意を見つけた時なんて、感嘆の声を上げてしまう。「わかっていなくても面白かったのに!」
(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
(本紙「新文化」2021年6月17日号掲載)