先日、久しぶりに配信ではないLIVEを楽しんだ。チケットの日付はちょうど1年前。コロナの影響で、予定していたLIVEが軒並み延期や中止になっていた頃だ。1年間チケットを大事に保管し続けたファンが、ライブハウスに集結した。
不安な日々を過ごしていたのはミュージシャンも同じで、ツイキャスやLIVE配信が視聴された「数字」ではなく、客席に集まったファンの顔を生で見て、ようやく必要とされている実感が湧いたようだった。
その数日後、『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)が11万部を突破した青山美智子さんとお会いした。LIVEの記憶も新しく、もし読者が一堂に集結したら、東京ドーム2Daysですね、と盛り上がった。
本の売上げは何万部といわれるし、書店でも何冊売れた、とカウントする。だがそれでは人の顔が見えず、実感が湧かない。買った人が一堂に会する光景を想像すれば、よほどビッグなミュージシャンでない限り、目眩がするはずだ。
自分の書いた本を掲げて、読者が歓声を上げている。編集さんはギターで、営業さんはドラムで、ボーカルの作家が「サンキュー、トーキョードーム!」と煽れば、地鳴りのような歓声が返ってくるだろう。
(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
(本紙「新文化」2021年4月29日号掲載)