コンビニで何気なく買い物をすると、くじ引きの箱を持ってこられて、よく分からずに手を突っ込んでいることがある。会計金額に応じて引けるらしいクジのアタリは、店頭に並ぶペットボトルのお茶やカップラーメンなんかだ。コンビニでの買い物はあまりにも日常で、とっさのアタリにろくな反応ができず、店員側もアタリの頻度が高すぎるのか、対応が事務的になりがちである。
先の正月にテナントとして参加したキャンペーンで、一定の会計金額を越えたお客様に、スクラッチくじを配布していた。アタリが出れば、そのクジを500円分の商品券として、館内の店舗で使用できる。
その場で削ったくじを見て、あるお客様は私に「ありがとう」と言った。しかしキャンペーンを企画したのも、500円分をどうにかするのも、私ではない。渡せと言われたから、上から1枚取って渡しただけである。ところがそのお客様曰く、アタリを引いたのは私だそうだ。そう言われると、そうかもしれず、自分が幸運の女神みたいに思えて、まんざらでもない。
どうせもらえるならお茶よりコーラが良かった、などとコンビニで思った私とは大違いである。正月から、神様みたいな人のレジを担当してしまった。
(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)
(本紙「新文化」2020年1月30日号掲載)